映画鑑賞会

サークルでやっている映画鑑賞会の感想アーカイブです。

HERO

ロードジャスティス S

まずビジュアル面でのクオリティには圧倒されるものがある。どこを切り取ってもカッコ良い構図、大胆かつ印象的な色彩感覚、背景美術の美しい宮殿や雄大すぎる自然の風景、エキストラをふんだんに使った合戦シーンの迫力。そしてもちろん中国映画らしいハッタリの効いた戦闘シーンのアクションも見応えたっぷりである。例えば三国志を読んでも感じるが、中国の英雄譚では英雄豪傑たちの活躍ぶりはハチャメチャで現実離れしている。けれども古代の、あの広大な中国大陸にならこんな怪物たちがいたのかもしれないと思わせるロマンがある。本作のアクションはワイヤーを使っているのを隠そうとしていない節があるし、嘘くさいといえばそうなのだが、古代中国ならばこれで全く正解なのである。4人の刺客たち、武の神髄を極めた達人たちならばこのくらいできてもおかしくないという開き直りが小気味いい。書と剣技の奥義は同じ、という話や剣を持たない姿勢こそが剣の最高極致だという話もやはり神秘性を湛えた中華ロマンの延長上に捉えられるからこそ重みと説得力を帯びてくる。中島敦名人伝を思い出した。また、メインの話は無名と始皇帝との会話中の伝聞や推理のなかで展開してゆくという全体の構成も面白いものだった。無名が自分の手柄を語って始皇帝に近付いたあとで、始皇帝が無名の「十歩必殺」を見抜くものの既に必殺の間合いに入っていることに気づくというシステマティックな推理パート(?)によってその後の対話シーンの息詰まるような緊張感が作り出されているのも脚本の妙というべきだろう。刺客たちはただ自らの剣が皇帝を殺し得るほどのものだったことを知るのみで彼を殺さずに死んでゆく。残剣という知己を得たので死んでも悔いはないと言い放つ始皇帝も含めて、この辺りは人の命が軽くて個人の命運にあまり拘泥しない大陸的(東洋的)な「英雄」観が出ていると思う。刺客たちのような突出した「英雄」が歴史を動かす時代は一旦終わり、始皇帝法治主義による俗人的な治世が平和を作り出したのだ、というような歴史観はありそう。総じて古代中国のロマン主義的な世界観をバカでかいスケールと意欲的な演出で描いた傑作だといえる。

ニンチー 6点/10 物語1、主題1、演出1、映像2、音楽1

映像はアクション主体でありながら、主人公である無名の語りを中心に進むミステリー的映画。 4人の刺客の話と言えど、残剣と飛雪の話だけで半分以上ありほとんど二人の話が中心だった。 2002年公開ということでワイヤーがあからさまな部分もあるがアクションは躍動感があり、全体的に中国らしい美しさと壮大なスケール感のある映像が魅力的だった。 背景や服の色合いの調和がすばらしく、服の色でシーンを分けているのも分かりやすくてよかった。 ただの暗殺で終わらず中国らしい徳を求める思想みたいなものが落としどころとなっているのも納得感があった。

よいこ 6点/10

映像の7割がアクションシーンであったが、飽きさせない動きの連続で楽しめた。 残剣と飛雪の思惑の違いが随所に表現されている。

ザリガニ