映画鑑賞会

サークルでやっている映画鑑賞会の感想アーカイブです。

マイ・インターン

ロードジャスティス C

コメディとしてのテンポ感は悪くなく見やすい映画だった。ただ世代間のギャップというテーマをフラットに誠実に描けていたかというと正直疑問である。堅気で昔ながらの流儀を大事にするベンの紳士な振舞いは、ロバート・デニーロの演技にも支えられて確かにカッコ良いが、あまりに持ち上げられすぎてあざとい域に達しており、リアリティに欠ける印象だった。ピカピカのオフィスで働くキラキラのITアパレル業のバリキャリ経営者が最高にクール!という価値観(まずこれが鼻につく)を隠せておらず、そこに場違いなベンがやってきて意外な格好つけを見せるというところでバランスを取ろうとしている節があるが、少々先入観にとらわれた構図で単純に過ぎる気がする。やはりターゲットとしては30代以上の「もう十分大人だが、仕事に家庭に人生の正解がわからない」人々であり、彼らの有様を否定せず寄り添って、迷った時には正解を与えてくれる、そんな都合のいい存在がいてほしいという欲求が透けて見えているし、必ずしも70代男性の側のリアリティにはあまり寄り添えていないと思う。ベンがジュールスから完全に「安パイ」と思われているがゆえにホテルの自室にも入れてもらえることに違和感を抱くくだりや、最後CEOを断ったことをベンに報告したときの「そう言ってほしかったんでしょう?」みたいなセリフには、いいように扱われている老人サイドの抵抗を描いているように感じたが、やはり世代間の融和というところには達していない。例えばベタだけどベンも後悔と葛藤のなかに過去の人生を送ってきたような描写や、老いゆえに思うように動かない自分の身体を呪うみたいな描写は必要だったと思う。

ニンチー 4点/10 物語1、主題0、演出1、映像1、音楽1

作中に「絵本のページをめくるように」という表現が出てきたが、この映画もまさにそんな感じで絵本のように単純な原理で動く人間たちがコメディーを繰り広げる。 この映画に出てくる人間は深く物事をとらえていないので常にくだらない問題が発生するし、何か問題が起きても主人公が一言口を出せばたちどころに解決する。 シニアインターンを題材にしていると聞いて現実と関連のある示唆があるのかと思ったが、実際は水戸黄門のように主人公に都合のいいことしか起きない夢物語だった。 常にテンポよく切り替わる映像と小気味のいい音楽が分かりやすく登場人物の心情を見事に表現していて、何も考えずに見るには最適な映画に仕上がっている。 この先何の楽しみもない老人が見る子供だましのコメディとしては楽しめるが、それ以上の評価はできない。