映画鑑賞会

サークルでやっている映画鑑賞会の感想アーカイブです。

ジョゼと虎と魚たち

ロードジャスティス B

外面は感傷的なボーイミーツガールだが身体障害のような社会的なテーマを扱う作品としてもそれなりに誠実さはあったと思う。序盤のジョゼの社会性に欠けたヤバ女感も出ていたし、求めるものに「手が届かない」葛藤や、不幸な存在が周囲にデバフをかけてさらなる喪失をもたらす痛ましさにもリアリティがあった。ジョゼを傷つける「虎」への恐怖や、祖母が亡くなった後の(かなり壮絶だったろう)日常生活はもっとえげつない描き方はできたと思うし、お互いが夢を追いかけるという結末は理想的すぎるといえばそうだけど違和感をあげつらうほどではない。エモいだけで終わる作品かと思いきや展開にも意外性があり、印象的な演出も多かった。ジョゼにとって海や魚というモチーフは、亡くなった両親との思い出であるとともに、人魚の夢に象徴されるような障害から自分を解放する空想的な理想状態を意味している。陸では這うようにしか動けず、社会で息ができない自分を人魚に例えている。そのように独自の世界観を持ち、それを絵で表現できることが辛うじて恒夫に依存しない彼女自身の救いなのだが、この内的世界についてはもっと説明がないと彼女の「夢」、すなわち1人で生きるよすがになり得るだけの説得力がない。この点はサガンを解する司書の人とのシーンがもっとあっていいはずで、尺の都合で削ったっぽく見える。一方恒夫は魚が群れているところを見るのが好きだと言っていて、片親で孤独だった自分を熱帯魚に重ねて、それよりは人同士が相互に関係し支え合うような世界を望んでいると読める。だからジョゼに対する気遣いにも金以外に彼自身の信念があったと思えるが、やはりそのあたりをもっと深掘りしてくれてもよかった。少女漫画っぽいという指摘は割と納得した。バイト先の女の心情描写がやたら丁寧で恐らく最も共感しやすいキャラクターなのではないか。

ニンチー 6点/10

映像、演出、感情表現という面では非常によかったと思う。 魚を夢や目標、虎を夢への障害や他人と捉えると、絵本の内容がまんまストーリーの解釈だと考えてよさそう。 夢への純粋な思いを全肯定し、障害を乗り越えて努力するキラキラストーリーということで個人的には関心の範囲外の作品ではある。 少し悪いことを言えば、ジョゼには鈴川に初めて会った時に見せたように足に障害を抱えて生きる中で醸成していった差別的被害意識があるようにも見える。 終盤虎に立ち向かうという決断をして鈴川の前から姿を消す展開はジョゼが自身の生き方を選択する意思が見える反面、まだそういった自身の被害意識を相対化できてなかったのではないかと思う。 そうはいいつつも、ジョゼに無責任に夢を追い求めることを望んだ鈴川が足を骨折したとたん自身の夢を諦めてしまうところなどは単純でない人間性に踏み込んだフェアな描写だと思うし、なんでも助けてくれる優しいお兄さんであるところの鈴川が弱さを見せることは少女漫画的文脈からの脱却をしているようでリアリティを感じた。 こういったシーンでの息が詰まるような絶望感は心理描写としてよかったが、少し語りすぎたきらいはあったように感じなくもない。 原作や他メディアでは全然違う作風のようなこともwikipediaに書いてあったので、今作は10代後半から20代向けのボーイミーツガールアニメとしてはいい改変だったんじゃないかなと思う。

よいこ 5点/10

ジョゼと恒夫に限らず、人と人の関わりによって、自己の抱える問題について前向きに向き合うようになる話。 おばあさんが意味深で言動の意図がわからない。

ザリガニ 6点/10

恋愛作品あるあるが詰め込まれていて万人に勧められるボーイミーツガール。原作や他の映像化も気になってくる。ツッコミ所が全て「ティーズ向けだから」「こいつら大阪人だから(ド偏見)」で説明出来るのが良い。"障害"への向き合いが令和にしてはステレオタイプだったのが不誠実。