映画鑑賞会

サークルでやっている映画鑑賞会の感想アーカイブです。

アヴァロン

ロードジャスティス B

筋道立てて話を理解しようとすると相当難解、というか分かるように作品を作ってない。しかし根底にあるのは他の押井作品でも見られるような、人間の認知能力に対する疑義である。そこではバーチャルと現実、因果関係、記憶などが絶対的でなく置換可能で曖昧だ。作中に登場する3つの世界のいずれが最も「現実的」であるのかは意図的にぼかされているし、各人物の目的や思考も断片的にしか描かれていない。アヴァロンは伝説上で負傷したアーサー王が臨終を迎える場所だが、それを「英雄の魂の眠る場所」に見立てたネーミングである。アッシュたち歴戦の「ウィザード」メンバーはゲームではまさに「英雄」だが、しかしどこかでこの闘争から降りたいという願いを持っていたことが示唆される。アッシュの見るような色彩のない日常があり、ゲームにおける闘争がそこからの救済となるはずが、終わりのない闘争は日常と同化して現実世界と同様の成長主義が蔓延している。だから閉塞感を打破するための「ゲームクリア」の可能性がバックドアのような形で存在している。ただしそれが真の救済を意味するかどうかは定かでなく、植物状態になったマーフィの腑抜けた表情との対比があり、まさに表面的な事象からは何が真実なのは分からない。現実社会に生の実感を見出せない「英雄」の集う聖地(ゲーム)としてのアヴァロンがある一方で、闘争と成長主義から降りて平穏を得る場所(≒死)というダブルミーニングになっている気がする。最後の「Welcome to AVALON」は後者を意味していると考えるとよさそう。アッシュがゴーストに銃を向けるのは闘争の世界に戻るとも解釈できるが、ビショップらを使って「現実」を維持するためにゲームバランスを調整し、キャラクターたちを翻弄する製作者=神への反逆だと考えてもいいかもしれない。実写なぶん全体的に細かい表現のチープさはあり、あまりにも冗長なシーンが多すぎた気もするが、ゲームの世界も色がなく現実味のない「現実」もほぼ同じ質感で描かれることでテーマに説得力が生まれている側面もあると思う。あと音楽の使い方が印象的だった。労働の合間にゲーセンに行ってはPvPに熱中していた頃を思い出す。

ニンチー 8点/10

よいこ 3点/10

仮想空間と現実の混同をテーマにした作品。 全体的に会話シーンが少なく主人公が考えていることがわかりにくいため、感情移入しづらい。 ヴィジョップはゲームバランスの調整のため、シーフはマーフィーへの懺悔のため、マーフィーは楽園生活の享受のため行動していた。

Quanta 6点/10

・よくある「今認識している世界は現実か虚構か」を問う作品

・明確なメッセージを読み取りにくい。それは各自の想像・妄想・解釈を促すとも言える。だから、視聴後に話し合うことを目的とするのなら、良い映画だと思う。

・音楽は気分を高揚させるカッコいい曲であり、iTunes storeで購入したいと思ったほどだった。(結局売ってなかったけど)

【以下、感想】

(1)まず話の内容について自分なりの見解を示す:

主人公はゲームマシンを使って現実世界と虚構世界とを行き来する。 しかし、主人公にとっての現実世界では、他人が殆ど動かなかったり、犬が突然消えたり、書籍が全て白紙だったりと、夢やゲームのように不可解な現象が生じる。 だから、主人公が住む現実世界も、現実であるとは限らない。 一方で、主人公自身は

 ・虚構世界に行ったままの人間を戻そうとする

 ・現実世界で、愛犬のために熱心に食事を作る

のような行動をしており、主人公にとっての現実世界を生きるべき世界と考えているように見える。

(2)次に、本作品の主張?に対する自分なりの見解を示す:

「今、自分が認識しているこの世界が現実か虚構かを区別することはできない」と主張しても、何も得るものはないと思う。 この手の議論は議論をするための議論にすぎず、何も生まない。 そうではなく、例え夢か現か分からなくても、自分は何をしたいのかを考えて、好きに行動するのが、幸せな生き方なのではないか? 少なくとも、本作の主人公はあやふやな現実の中で、自分のやりたいことをやっている(自分らしく生きている)と思う。