映画鑑賞会

サークルでやっている映画鑑賞会の感想アーカイブです。

オールド

ロードジャスティス C

人生とともに降りかかってくる社会的役割があるとしても、それと結びついた仕事や名前さえも忘れていられるのがバカンスでありリゾートという場である。だがこのイカれたビーチはそうした甘えを許さない。病気や出産となれば誰かが責任を負って対処しなければならないのに、時間経過で若さも身体能力も思考力も失ってゆく。登場人物たちはそうした人生の理不尽さと恐怖をハイスピードで体験する。外科医の一家(チャールズ、クリスタル、カーラ)はそれぞれの人生の問題に対する解答を見出せずに惨めな最期を迎えているようにも見える。一方ではじめから離婚するつもりだったガイとプリスカ夫婦は仲睦まじく穏やかに死んでいくが、彼らが最終的に見出すのは妥協ともとれるような人生への諦念である。異常な状況とは対照的にずっと美しいビーチの情景は、理不尽に満ちているのにそれを受け入れた者には魅力的に映るまさに人生の象徴のようでもある。サスペンスホラーを基調としながらも、即物的な恐怖ではなくテーマ的な一貫性をもってより人間の根源的な恐怖を駆り立てようとする点では「ミッドサマー」に近いものがあると思う。ただ個人的には同作ほど話にのめり込めず怖さも感じなかった。理不尽の原因が完全な自然現象として説明されるのではなく、序盤の伏線があって大きな社会による人為が絡んでいたというオチは物語としては納得のいくものだったが、このせいでテーマ性が薄まっているような気もしなくはない。

ニンチー 6点/10 物語1、主題1、演出2、映像1、音楽1

"寄る年波には勝てない"という言葉もあるが、まさしく波のごとく押し寄せる老いと死に対する恐怖を描いたホラー。 仕事や目の前の事に追われいつの間にか年を取っていることに気付くような感覚に近く、時間という自然が人間に等しく与える抗えない運命を描いているといえる。

リゾート地に訪れたキャパ一家はホテルの支配人に特別なビーチを紹介されるが、そこは30分で一年過ぎる不思議な場所だった。 ビーチに招待された11人は急速に病気が悪化したり、老いて錯乱状態になったりし、次々と死んでいく。 最後に残された姉弟が暗号を解いてビーチから脱出し、仕組まれた陰謀を明らかにする。

序盤から子供が意味深な発言をしたり、気味の悪いカットが合間に挿入されたりする展開があり不安を煽られる。 ビーチでは不可解なことが起き人間たちが対処に追われる中、波だけが一定のリズムで寄せては返すところに時間の理不尽なまでの超然性を感じた。 私自身も二十代後半に入り、年を取ることに対する恐怖は他人ごとではなく、自身のこれからの運命をまざまざと見せつけられているようだった。 特に、老化と共にいつの間にか増えている責任や固定化していく思考みたいなところにリアリティを感じた。 ラストの展開はせっかく作ったアイデアを惜しみなく使おうという執念を感じるが、そのせいで自然の恐怖より超常現象ですら利用してしまう人間の性という方向にぶれてしまっているような気がする。